障害年金と労災保険

文責:所長 弁護士 岡田大

最終更新日:2025年01月07日

1 障害年金と労災保険は両方受給できる

 仕事中や通勤中の病気やケガが原因で障害が残ってしまった場合、受給できる労働者災害  補償保険(労災保険)の給付には以下のものがあります。

 ・障害補償給付(障害補償年金または障害年金)

 ・傷病保障給付(傷病補償年金または傷病年金)

 病気やケガが原因で障害を負った際には障害年金の受給対象ともなりますが、障害年金と労災保険、両方に該当する場合には、どちらを受給できるのでしょうか。

 この場合、障害の原因である病気やケガの初診日時点で20歳以上のときには、同じ障害を理由として、障害年金と労災保険、両方もらうことができます。

 ただ、どちらも満額で受け取れるわけではありません。

 この場合は、障害年金は全額支給されますが、労災保険は下記2の割合で減額されることになります(併給調整)。

2 両方受給できる場合の併給調整割合

 ・障害厚生年金で1級または2級となり、障害基礎年金が併せて支給される場合

→ 労災給付が27%減額

 

 ・支給される障害年金が3級の障害厚生年金の場合

→ 労災給付が障害補償年金または障害年金の場合は17%減額

→ 労災給付が傷病保障年金または傷病年金の場合には12%減額

 

 ・支給される障害年金が障害基礎年金のみの場合

→ 労災給付が12%減額

 

 ※ただし、障害年金と減額後の労災給付の合計額が、調整前の労災給付の年額より低額となる場合には、減額前の労災給付の年額から障害年金を引いた額が労災給付の額となる。

3 20歳前傷病の場合は労災保険のみになる

 これに対して、障害の原因となった病気やケガの初診日に20歳前(厚生年金に加入している場合を除く)で、その傷病によって障害年金を受け取っており、さらに労災保険から年金を受け取れる場合には、障害年金が全額支給停止されます。

 代わりに、労災保険の給付は、満額を受けることができます。

 例えば、以前より20歳前傷病で障害年金を受け取っていた方が、その後業務上のケガや病気で労災保険から年金給付を受け取るようになった場合は、労災保険の年金は満額受け取ることができますが、元々受け取っていた障害年金の方は支給停止になるということになります。

4 障害年金と労災保険の両方を受給するなら専門家に相談

 障害年金と労災保険を両方受給する場合、年金や保険の種類などによって調整される額が変わってきます。

 また、労災保険と違い、障害年金は、主体的に申請手続きを行わなければ受給できないものとなります。

 そのため、両方の受給をお考えならば、まずは専門家に相談されることをおすすめします。

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